海賊版をめぐる事情
海賊版の現状
「海賊版」って最近よく耳にしますね。これって何だと思いますか? 答えは著作権や商標権を侵害する物品のことです。この海賊版や模倣品は、売り上げへのダメージや価格破壊、ブランドイメージの毀損などに被害を及ぼしています。海賊版や模倣品の被害は現在、世界で40兆円以上あります。特にマレーシア、ロシア、中国は海賊版製造・輸出の三大国となっており、これらの国での海賊版率はなんと90%を超えています。
被害が実際にある場としてはネットオークションがあげられます。ネットオークションの最大手Yahoo!オークションでは海賊版ソフト、DVD、偽ブランドが出回っています。それらの数は総出品数600万件の内、12万件(約2%)にも上っています。ただし、この数はYahoo!が不正商品かどうかを判断した上で削除した数なので、実際にはもっと多いと考えられます。この12万件の内、2/3がブランド模倣品(商標権侵害物)、1/3がソフトの不正コピー(著作権侵害物)です。ちなみに2003年時点での中国の違法コピー率は93%(日本は29%)です。
このような海賊版、模倣品への対策として、ロシアでは商品の簡易包装を行うことによって、正規版の値段を下げ海賊版と同金額に近い価格で販売しています。日本では(社)日本音楽著作権協会などの管理団体を作り、CDなどの著作権の管理をしています。
中国では上記に述べた日本とロシアの対策をどちらも行っていますが、あまり効果が出ていません。この理由には、中国は粉ミルクの模倣品(栄養成分がまったく入っていないが「粉ミルク」として売っている)など生命の危険に関わる模倣品も数多くあるため、著作権の侵害などの対策はどうしても後回しにしてしまうという状況があるからです。しかし、香港や台湾などでは上記の方法(日本とロシア)を行った結果、徐々に海賊版などの数が減少しているので、今後の中国政府の対策に期待したいところです。
中国における海賊版製造の実態
海賊版中国情報局 NEWS (ニュース記事「海賊版普及95%」の真偽、知財意識「普及途上」)によれば、中国における海賊版の普及率は93%に達しているというデータがあります。米国と同じく、日本も中国製の海賊版によって大きな被害を受けています。では、実際に中国の海賊版の状況を見ていきましょう。
DVD
日本貿易振興会の調査によると、中国の海賊版製造による日本企業の被害総額は、推定で1千億円を上回っているという数字があります。ひとつ例としてあげると、DVDプレーヤーは中国の 100社以上の家電メーカーによって、特許料が支払われないまま年間1000万台以上生産されています。そのうち800万台がアメリカに輸出されているという現状です。また、「中新網」香港2003年11月21日付報道によると、映画「ハリー・ポッターと賢者の石」(ワーナー・ブラザーズ配給)は中国でも人気の作品ですが、この作品は海賊版VCDやDVDで流通しています。
ゲーム機本体
2004年12月22日付のフィナンシャル・タイムズ紙は、『ソニーが中国における同社のゲーム機「プレイステーション2」の海賊版問題で5年間にわたって調査してきた結果、海賊版を生産した組織の実態が明らかになった』と報じています。刑務所で部品が組み立てられているという事例もあったそうです。5年に及ぶこの調査では、少なくとも10社の下請け業者(一日5万台の生産能力をもつ)からなるネットワークの存在が明らかになりました。
このような現状は中国政府当局も把握しているため、CDやDVDなど音響・映像の違法コピーに対して、合法ソフトの流通網の整備を行うという対応策に踏み切っています。2002年8月13日には南京、北京、上海など全国50都市で初の摘発キャンペーンを行い、合計約2750万枚の海賊版のソフトを一斉に廃棄しました。政府が海賊版追放に躍起になってきている背景には、WTO加盟に伴い知的財産権保護の強化を国際的に約束したにもかかわらず、取り組みの効果がいっこうに出てこないとの批判が世界各国で高まっているからです。また、裁判所も知的財産権保護の姿勢を鮮明にしつつあります。
TRIPS協定成立までの経緯
ここまでご覧になれば、なぜ知的財産権の保護がWTO内での議論の対象に挙がったか、なぜ海賊版を取り締まることが重要なことであるかがお分かり頂けたと思います。
知的財産権の保護に関しては現在に至るまで様々な条約や機関が設立されています。1883年のパリ条約(工業所有権の保護に関する条約)、1886年のベルヌ条約(文学や美術作品などの著作権保護に関する条約)がその始まりで、その後これら2つの条約を前身として1967年に国連の専門機関であるWIPO(世界知的所有権機関)が創設されました。WIPOでは上記2つの条約の運営とそれぞれの各国内での法律の調和を行ってきました。
しかし、これらの条約や機関はあくまで各国の自主性を頼りにすることを前提としていたため、強制力が無く、次第にその効力が失われてきました。そこで1995年のWTO設立と同時期に誕生したのがTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)と呼ばれるものです。この協定は7部73条から構成され、上記2つの条約をWTO加盟国に対して強制的に守らせることを前提とした知的財産権の保護を規定しています。そのためWTO加盟国はTRIPS協定にのっとった国内の知的財産権に関わる法律の整備が義務付けられています。
これまで見てきた中国の海賊版CD・DVDの例を見たとおり、まだまだTRIPS協定には海賊版製品を撲滅するには不十分な部分があります。そのため今回香港での閣僚会議においてもTRIPS協定に関する議論が行われると予想されています。
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