エビとマングローブ林
最近、エビを食べましたか? 日本でのエビの消費量は世界一と言われるほどです。昔の日本人にとってエビは高級食材でした。1961年に水産物では初めて輸入が自由化され、輸入量が上昇しました。そのため低価格でエビが食べられるようになり、最大のエビ消費国になりました。現在、消費量の80%以上を輸入に依存しています。日本のエビ輸入国のほとんどが発展途上国です。そこではいろいろな問題が生じているのです。
エビと貿易
通常、エビは小船での漁なら漁獲量も少なく問題ありません。しかし問題は日本の大型トロール船です。大型トロール船はエビから小魚まで、すべてをさらっていきます。小魚は持ち帰ってもお金にならないので捨てられます。
その結果、エビばかりでなく魚もとれなくなり、海は急速に荒れます。大型トロール船により獲ったエビはすぐに冷凍され、そのほとんどが日本に輸出されます。
また、従来の方法でエビを獲る漁民と大型トロール船を扱う漁民との間に争いが起き、漁民から都市部に出稼ぎに出たり、引っ越す人も増え、漁村は過疎化し、都市部はスラム化する原因のひとつになっています。今ではさまざまな規制が設けられるようになりました。
エビとマングローブ林
エビの乱獲のため、数が減少していくと、エビは外貨の獲得源であるため、今度はエビの養殖が主流になってきています。1980年代から90年代にかけてタイなどの東南アジアにエビ養殖池が急激に広がりました。日本の食卓にはエビがあふれ、他方でマングローブ林が急激に姿を消す現象が際立ちました。
マングローブ林を伐採するのは、海水と淡水が混じりあう汽水域がエビの生育する場であり、河川の水と海水の入れ替えが必要なためです。また、養殖池は1つの池で非常にたくさんのエビを飼うため、エビの病気を誘発し、また土質も悪くするので、早いものでは3年で使いものにならなくなります。
例えばタイでは、この20年間で200万ヘクタールあったマングローブ林が、半分の100万ヘクタールになってしまいました。生態系が崩される自然破壊が大規模に進み、現在も続いています。
マングローブ林
「マングローブ」という植物があるわけではなく、熱帯や亜熱帯地域の河口など、満潮になると海水が満ちてくるところ(潮間帯)に生えている植物をまとめてマングローブと呼びます。世界中では100種類以上の植物がマングローブと呼ばれています。マングローブ林の根は大気中に顔をだしており、光合成を営んでいるので、熱帯雨林以上に炭素固定能力があります。これらマングローブ林は魚貝類に餌や隠れ家を提供し、産卵の場ともなります。その土地に住む人たちには、豊富な食料、燃料、建材などを提供し、さらに風や高潮から人命、家屋、作物を守り土砂の流出を防ぎます。
アジア太平洋地域では、マングローブ林の伐採により養分を含む土壌がえぐられ、砂だけになってしまった場所が多く見られます。直接外洋に面した砂地へのマングローブ植林は技術的にも困難を伴います。このまま伐採が続けば、地球規模での生態系が破壊され、多くの生物が死滅する恐れがあります。
FAO(国連食糧農業機関)によると、世界のマングローブ林の総面積は1980年時点で約1,500万ヘクタールと報告されています。かつてマングローブ林は熱帯地方の海岸線の半分を覆っていました。しかし、近年の経済開発によって世界各地のマングローブ林は急激に減りつつあり、過去20年間で沿岸のマングローブ林はその約35%が破壊されました。特にアジア・太平洋地域での減少が目立っており、それらの中にはマングローブ林が半分になったという壊滅的な状況にある国もあります。
マングローブ林の減少の主な原因は、“エビの養殖池や農地、塩田などへの転換”のほか、“ダム建設”、“スズの発掘”、“マングローブ炭の採取”、“沿岸開発のための埋め立て”、“戦争による被害”などが挙げられます。
では、マングローブ林が減ることによってどのような影響がでるのでしょうか。主なものを挙げると、“多種多様な生物の生活の場が破壊される”、“住宅用の建材や木材の供給が減る”、“災害から家屋や生命を保護する役割が損なわれる”、“海水が逆流して水田に塩害が出てしまう”、“熱帯林以上の炭素固定能力、炭素を蓄える貯蔵庫を失ってしまう”などがあります。
マングローブ林がこれ以上地球から姿を消さないようにするため、現在ではたくさんの企業や団体によって、いろんな国で植林運動が行なわれています。このような運動はマングローブ林の回復だけではなく、企業のイメージアップの役割も果たしています。例えば、東京海上日動は1999〜2003年度累積実施面積で合計3,444ヘクタールの植林をしたと報告しており、植林運動に前向きの姿勢であることアピールしています。また、子供達が中心になって行う植林運動は、自然環境保護教育としての効果があると期待されており、植林運動はますます注目を浴びています。しかし、植林運動を行う一方で“原生林は依然としてなくなりつつある”ということは忘れてはならないでしょう。
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