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環境規制と貿易

はじめに

世界の森林面積は……
生き物の絶滅の規模は……
都市のごみ問題は……

さまざまなモノが地球規模で輸出入される今日、貿易はどのように環境問題と関連してくるのでしょうか。自由貿易のおかげで、環境に配慮された技術が貿易を通じて世界に普及していく、などといったプラスの効果も存在するという意見もあります。しかし今回は、自由貿易のルールのために環境保全が阻害されてしまうのではないか、と危惧されている問題について、考えてみたいと思います。

経済活動の結果、環境問題が深刻化してしまうことがあります。たとえば、木材採取や単一栽培農地の造成を目的として、天然林が伐採されてしまうこと。もしくは、魚などの海洋資源が生態系を破壊するような方法・規模で乱獲されてしまうこと。ほかにも、有害物質を含んだ廃棄物が、環境規制の厳しい国から緩い国に“輸出”されてしまうことなんかを思い浮かべる人もいるでしょう。

環境や人の生活・健康を守る方法として、それらを脅かすと考えられる経済活動を、法律によって制限しようという方法があります。たとえば、生態系に配慮しない方法で生産・捕獲されたものには課税する、リサイクルできない容器は使用を禁止する、などです。
現在はもし、そうした法規制を持つ国に、規制対象品が輸入されることになれば、国内製品に課されていた環境規制の効果を持続させるために、国内に入ってくる海外製品にも同等の措置を課すことが考えられます。
ところがこうした方向性は、GATTが謳いWTOが発展的に受け継いできた、規制を減らし自由にものをやり取りしていこうという方向性と相対立してしまいます。
環境保全の動きと経済のグローバル化とが共に進行した結果、80年代ごろから、対立するこれらの法律をめぐり、現実に問題が起こるようになってきました。

環境保全と自由貿易の対立 〜「イルカ・マグロ事件」〜


環境保全と自由貿易の対立が経済紛争に発展したひとつの事例を紹介しましょう。

アメリカには、漁業をする際のイルカの混獲率を定め、それを越える漁法を禁止することを定めた「海洋哺乳動物保護法」があります。アメリカの国内法ですから、アメリカ国籍の漁民および船舶あるいはアメリカ領海での漁業にはこの法律が適用されます。
この法律の制定後、アメリカ漁民はキハダマグロを捕まえるのに、キハダマグロと並んで泳ぐイルカの群れをいったん逃がさなければ漁ができなくなくなりました。漁獲高は大きく落ち込み、アメリカの魚市場には環境に配慮せず安く漁獲をしているメキシコや日本からの製品が入り込むようになりました。さらに、アメリカの漁民は、船舶や加工場を環境規制のないメキシコ籍に移し、メキシコで作った缶詰をアメリカに逆輸入するようになりました。
「保護法」が機能しなくなるこうした事態への対応として、アメリカがメキシコからの缶詰の輸入禁止措置をとったところ、メキシコが、それは自由貿易のルールに違反する、としてGATT紛争処理委員会(当時)に提訴したのです。
結局、アメリカが敗訴する形でこの裁判は終わりました。

注)「イルカ・マグロ事件」は、WTOの前身であるGATT(貿易と関税に関する一般協定)時代に起こりました。GATTは農産物以外のモノの貿易の自由化について定める協定で、WTO発足後はWTO協定の一部として維持されています。

たとえば同品質の木材でも、伐採が禁止されている森から違法に切ってきたようなものと、持続的に木材が採取できるように管理保全された森から切ってきたものとが同じであるならば、生産コストがかからない天然林の伐採は止まらないでしょう。
遺伝子組み換え作物が人の健康や自然界の遺伝子情報に悪い影響を及ぼす確証はありませんが、悲劇的な結論が実際に出てしまってから対応しても遅いのではないでしょうか。

環境問題を解決していくために重要な、二つの考え方があります。
モノが作られていく工程でちゃんと配慮があるかを評価する、「PPM原則(Process and production methods)」。そして、悪影響の因果関係がはっきりしない場合にも、原因と疑わしいものには規制をかけても良いという、「予防原則」。水俣病などの公害経験からも、こうした考え方は非常に重要なものであることがわかってもらえるかと思います。
環境問題や人の健康、人権などの問題を扱う際、これらはとても大切なこととして国際社会では認められてきています。ところが、WTOの枠組みの中では、この考え方が未だに認められないのです。
PPM原則や予防原則は、一つ一つの製品に適応できるかについて、製造プロセスを考える必要性が出てくるため、迅速な貿易自由化がしにくくなるという懸念が予測できます。

「環境と貿易」に関する現在の動き


先に取り上げたイルカ・マグロ事件は、一国の規制措置がWTOルールに違反するかどうかという問題でした。WTOでは基本的に、一国の一方的環境規制措置は認めない考えを示しているようです。

現在問題となっているのが、気候変動枠組み条約やワシントン条約などといった多数国が加盟する国際的な環境条約とWTO協定との矛盾をどう解決していくかということや、PPM原則を最終製品に具体化させる、ラベリングをどのような基準で認めていくか、ということです。

これらはWTOの中に組織された、「貿易と環境委員会」という諮問機関で話し合いがなされている段階です。

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